梅雨に似合うアジサイの花
梅雨入り間近になり、町を歩くと民家の庭先にアジサイ(紫陽花)の花が目立つようになった。
アジサイは不思議な花である。雑草のようなのに美しく、梅雨の雨によく似合う。季節感のある花としては桜に匹敵するのではないか。
自分は雨が好きだからアジサイも好きなのだが、よく見かける花なのでかえって特別な記憶はない。こどもの頃にきれいだと思ったことはなく、葉にカタツムリが這っていて気持ち悪い草だと思っていた。大人になってから味わいがわかる花なのかもしれない。
アジサイの花は鎌倉を連想
近所には小田原城址公園や箱根登山鉄道沿線といったアジサイの名所もあるが、アジサイといえば鎌倉を連想する。鎌倉でアジサイと言えば自分は北鎌倉の明月院を思い浮かべるのだが、現在は長谷寺(鎌倉)の方が有名らしい。確かに宝物館横の斜面にあるアジサイは種類も彩りも豊富で、海が見える開放感もあり人気が高いのもわかる。
明月院のアジサイは青系統の花が多く、彩りに欠ける。だが、雨に濡れる青みかがったアジサイはここならではの風情があり、自分はこちらの方が好みだ。
同じ時期に見頃になる菖蒲やあやめも青系統の色。梅雨には青がよく似合う。
海が似合う鎌倉のアジサイ
海が見えるアジサイと言えば、極楽寺駅の近くにある「成就院」の参道が以前はアジサイの名所で、由比ヶ浜の海を背景にした景色は開放感があり好きだった。近年参道の改修が行われ、アジサイの株の多くが震災被災地に送られたようで、以前ほどの花が見られなくなったのは残念だ。
長谷寺もそうだが、海を背景にしたアジサイは晴れた日に映える。鎌倉ならではの「海街diary」的な風景で、京都や奈良にはない世界だ。
長谷寺や成就院のアジサイは晴れた日、明月院は雨の日という楽しみ方もありそうだ。
まんだら堂やぐらのアジサイ
今はもうなくなったが、40年以上前、逗子の「まんだら堂やぐら」というところがアジサイの名所になっていて一度訪れたことがある。背たけよりも高い色とりどりのアジサイが壁のように咲き誇っていて圧巻の眺めだった。
当時あったお堂で元気のいいお坊さんから、ここのアジサイがこんなに大きいのは、気持ちを込めて手入れをしているからだと説法めいた話があり、当時働いていた職場の朝礼当番の時、その話を披露したら、手入れをしないからそんなに大きくなるのだと先輩に言われたことを思い出した。
ところで、今ならネットで「おすすめの名所」を見つけて、グーグルマップで訪れるのだが、一体どうやって辿り着いたのだろうと一瞬思ったが、つい20〜30年前までは、観光案内の本で調べて行っていた。ネットの便利さに感覚が麻痺している。当時乗っていた125ccのバイクで恐らく道路地図を見ながら走り着いたのだ。
「まんだら堂やぐら」は現在は閉鎖されていて、アジサイの花ももう見られず、元の静寂な場所に戻っているようだ。このあたりは鎌倉時代の武士、僧侶などの埋葬地になっていて、お坊さんが供養のためにアジサイを植えていたらしい。
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埋葬地の供養のため植えたアジサイを多くの人が見物に来て楽しんだ。今は静かだがもの寂しい場所になっている。どちらが良いのか。まんだら堂やぐらに鮮やかに咲いていたアジサイを思うと複雑な思いがする。
アジサイの花の色
アジサイの花は土の酸度で色が変わることはよく知られている。昔読んだミステリーでは花の色が変わったため、そこに死体が埋められていることに気付くという謎解きがあった。
土壌の酸度により、花の色は青〜紫〜桃色のように変わる。中間の色の微妙な色彩も味わい深い。自分は薄紫色が好きだが皆さんはいかがですか?