keepr’s diary(本&モノ&くらし)

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【本の感想】森村誠一「火の十字架」


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あらすじ

1970年代後半。山谷で会社設立に誘われた男が殺され、保険金詐欺が疑われる。同じ頃、夫婦強盗殺人事件が発生するが、家の元持ち主の紛失した鍵が犯行に使われた可能性が出てくる。太平洋戦争の転換点であるミッドウェイ海戦に関わった人たちのその後の人生を交えて、それぞれの事件の刑事たちが真相を解き明かしていく。

 

目次

  • 設立された死
  • 逆転の海戦
  • 鬼の情け
  • 誤射した十字架
  • 殺人会社
  • 強殺の合い鍵
  • 老兵の感傷
  • 中間現場
  • 幻の恋人
  • 奇胎の戦後
  • 切り離された現場
  • 帰り車の客
  • 被害者の〝遺詩〟
  • 二重の遺族
  • 心酔した共通項
  • 殺人の環
  • 共犯の写角
  • 酷似した因縁
  • 牽引された帰途
  • 駐車した決め手
  • 不帰の航続

 

感想

1980年の著作ということ

あまり期待せずに読み始めたが、久しぶりに読みごたえのある作品に出会った気がする。森村誠一氏の1980年発表の作品で、分厚い長編だが現在のミステリー作品よりも骨太で読みごたえがあった。

 

太平洋戦争のミッドウェイ海戦が事件の端緒となり、事件を捜査する刑事の一人は同海戦で生き残った元軍人。終戦から30数年後の設定だから、軍隊経験のある人は当時50歳代。軍隊に行った人は既に90歳代で数少なくなった現代とは時代が違う。

 

そう、44年前、1980年当時はまだ戦争の記憶が風化してはいなかったのだ。軍隊経験のあった自分の父も今は故人で、自分を含めて、いまや戦争はニュースや本、映画、ゲームの中の出来事でしかない。

 

現在、この当時を舞台にした小説を書いても想像にしかならないが、1980年に書かれたこの小説は、まだ戦争が風化していなかった時代の雰囲気が身近に感じられる。

 

構成と内容が秀逸

登場人物それぞれにミッドウェイ海戦に対する想いと過去があり、立原道造のセンシティブな詩が彩りを添える。時に見当違いの方向に向かいながら、3つ事件の捜査が次第に結びついていくのは推理小説の王道だろう。謎解きのタイミングが絶妙で読み進むのがとても心地よい。

 

著者の代表作「人間の証明」を想起させる重厚で感動的なミステリーである。

 

感動のエンディング

零戦、海。美しすぎるエンディングだ。最後はこうなったらいいなと読者が望むような劇的な結末である。犯人の予想がついても、なくなった戦友への想い、定年間近の刑事から犯人へのメッセージは、自分の人生の何ものかに触れたのか、感動的で人中で涙が溢れて困った。

 

作者の森村誠一氏は代表作の一つである「悪魔の飽食」などから左翼的なイメージを持っていたが、この作品での戦争の描写は決して自虐的なものではなく、いい意味で美化され感傷的だ。

 

著者は実は柔軟な思想の持ち主かもしれない。或いは1980年当時は、今ほど思想が狭量ではなかったのかもしれない。現代の分断された住みにくい世界を思うとそんな気もするのである。

 

この作品をおすすめしたい人

  • 戦争を描いた奥深いミステリーを読みたい人
  • 感動的な推理小説を読みたい人
  • 1950〜60年代に生まれた人

 

著者について

森村 誠一(もりむら せいいち、1933年〈昭和8年〉1月2日 - 2023年〈令和5年〉7月24日)は、日本の小説家・作家。元ホテルマンであり、ホテルを舞台にしたミステリー作品を多く発表している。江戸川乱歩賞日本推理作家協会賞など数々の推理小説の賞を受賞した。

主な作品

他多数

 

※ 著者、主な作品はフリーの百科事典ウィキペディア 森村誠一 - Wikipedia を参考にした。

 

 

 

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