夏ももうじき終わりますね。惜別の思いを込めて自分の好きな堀辰雄「風立ちぬ」から夏の高原風景を描きました。
「風立ちぬ、いざ生きめやも。」(風が吹いてきた、さあ、生きなければ。)
序曲
それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木蔭に身を横たえていたものだった。そうして夕方になって、お前が仕事をすませて私のそばに来ると、それからしばらく私達は肩に手をかけ合ったまま、遥か彼方の、縁だけ茜色を帯びた入道雲のむくむくした塊りに覆われている地平線の方を眺めやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその地平線から、反対に何物かが生れて来つつあるかのように……
堀辰雄の小説「風立ちぬ」の冒頭、印象的な軽井沢の高原の場面をイメージして描いた。
小説ではヒロインは2年後に八ヶ岳山麓の療養所で亡くなる。読み返すと冒頭の夏の日々の描写が儚くもより美しく感じられる。
そんな儚さはとても描けないので文章そのままの情景を描かせていただいた。
⇩本の感想はこちらに詳しく書いたのでご興味があれば是非ご覧ください。