著者について
沢村 鐵(さわむら てつ、1970年11月11日[1] - )は、日本の小説家。岩手県釜石市鵜住居町出身。2000年、地方都市の学校を舞台としたミステリー小説『雨の鎮魂歌(レクイエム)』(幻冬舎)でデビューする。
主な作品
警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結シリーズ
- フェイスレス - 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結(2013年6月 中公文庫)
- スカイハイ - 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結2(2013年9月 中公文庫)
- ネメシス - 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結3(2014年2月 中公文庫)
- シュラ - 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結4(2014年7月 中公文庫)
クラン シリーズ
- クランI 警視庁捜査一課・晴山旭の密命(2015年7月 中公文庫)
- クランII 警視庁渋谷南署・岩沢誠次郎の激昂(2015年11月 中公文庫)
- クランIII 警視庁公安部・区界浩の深謀 (2016年6月 中公文庫)
- クランIV 警視庁機動分析課・上郷奈津実の執心 (2016年12月 中公文庫)
- ゲームマスター 国立署刑事課 晴山旭・悪夢の夏 (2017年2月 祥伝社文庫)
- クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査・足ヶ瀬直助の覚醒 (2017年7月 中公文庫)
- クランⅥ 警視庁内密命組織・最後の任務(2018年1月 中公文庫)
極夜 シリーズ
- 極夜1 シャドウファイア 警視庁機動分析捜査官・天埜唯 (2019年8月 祥伝社文庫)
- 極夜2 カタストロフィスト 警視庁機動分析捜査官・天埜唯 (2019年11月 祥伝社文庫)
- 極夜3 リデンプション 警視庁機動分析捜査官・天埜唯 (2020年4月 祥伝社文庫)
その他
- 雨の鎮魂歌(2000年9月 幻冬舎)→ 雨の鎮魂歌 (2018年10月 中公文庫)
- 運命の女に気をつけろ(2008年6月 ジャイブ)
- 封じられた街 北風のポリフォニー(2008年11月 ポプラ社)
- 封じられた街 薄氷(うすらい)のディープシャドウ(2009年3月 ポプラ社)
- 封じられた街(2011年9月 ポプラ文庫ピュアフル【上・下】)
- 十方暮の町(2011年9月 角川書店)
- ノヴェリストの季節(2016年3月 徳間書店)
- ミッドナイト・サン (2017年6月 双葉文庫)
- あの世とこの世を季節は巡る(2018年3月 潮文庫)
- はざまにある部屋(2020年7月 潮文庫)
ほか
以上出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
あらすじ
渋谷で発見された警察OBの死体。明らかに殺人のようだが、検視官は自殺という。この検視官はほかにも間違った鑑定ばかりで、 捜査一課長から実態を探るように命じられる。だが、探るうちにぶつかったのは大きな闇だった…
目次
- プロローグ――暗々裏
- 第一章 密行
- 第二章 潜行
- 第三章 噴出
- マン・オン・ジ・エッジ 1
- 第四章 炙出
- マン・オン・ジ・エッジ 2
- 第五章 密盟
- マン・オン・ジ・エッジ 3
- 第六章 収斂
- マン・オン・ジ・エッジ 4
- エピローグ――
感想
さて、いよいよ「クラン」です。
一柳美結シリーズとの違い
沢村鐵氏の小説は相変わらず面白いのですが、前シリーズの「スカイハイ」~「シュラ」4巻の隅田署刑事課一柳美結シリーズとはいくつが違う点があります。
エンタメ小説から警察小説に
まず、警察小説であること。前作も主人公は刑事で所轄署、警視庁、警察庁の警察官がメインの出演者でしたが、前作では国際的なハッカー、中国工作員、史上最悪の死の商人が登場して、彼らとの闘争がストーリーで、エンターテイメントの色彩が強い作品でした。
今回は、同じく所轄署、警視庁、警察庁が出演者&舞台ですが、横山秀夫氏などの警察内部の人間関係をメインに描いたいわゆる警察小説に近い感じの物語です。
敵が違う
前回の敵はハッカーや死の商人でしたが、今回の敵は?まだはっきりしませんが、警察の闇の組織のようです。
章により主人公が変わる。
前シリーズも章の間の「間奏」で主体が入れ替わっていましたが、本作ては本文の章ごとに主人公が変わる。なので慣れないとストーリーを追うのが少し大変かもしれません。ここは少し欠点でしょうか。
タイトルの付け方が違う。
前シリーズは、タイトルが「フェイスレス」「スカイハイ」…というように各巻ごとに違いましたが、今回は「クラン」1.2…というように同じ名前です。その代わり「晴山の」というように巻ごと主人公が変わる付け方です。しかも前述のように同じ巻の中も章ごとに主人公が違っているので、これもさらに戸惑うかもしれません。
・・・ですが、やはり面白い。
話の展開と文書のうまさ
話のツボを押さえた文章はさらにうまくなっている気がします。冒頭から、この物語の重要人物が渋谷の街を巡る。ややハードボイルドタッチが渋くていい。前回からの変更かもしれません。
公園の奥にある古びたベンチ。こんなところでは死にたくないと思わせる寂れた場所だ。
「少年係なんかに左遷される不器用な男だから、好きなんですよ」「同情か。私も落ちぶれたもんだ」「あんまり危ないヤマに足を突っ込まないように。もう、無理が利く歳じゃないでしょう」「ヤクザに心配されるようになったらおしまいだ」
本作でワクワクした箇所はいくつもありますが、特にすごいなーと思ったところをいくつか引用。
ふいに闇の中に気配を感じたのだった。異様な獣がそばにいる――ぞわりと鳥肌が立つ。本能が警告していた、すぐ逃げ出せと。だが無理だ逃げ場はない。……ばんは……声が聞こえた。俺は、命の覚悟さえした。こんばんは…………もう一度聞こえた。
心底恐ろしかった……どんなに凶悪で厄介な犯罪者も、底深い闇を抱えたサイコパスもここまでは恐ろしくなかった。どんな犯罪者でも人間ではあった、わずかでも理解の余地があった。だがこの初老の警察官僚は人間じゃない、悪魔そのものだ。
「……どこにいるんです」俺は虚ろに問い返していた。なんの希望も求めずに。「目の前にだよ」肩にかかった手の感触を、脳がようやく感知した。それは優しかった。
あとは読んでのお楽しみ。
もっと評価してほしい
なぜもっと評価されないか。
これが不思議でならない。レビューの評価はいまいちだし。
もっと売れていい作家です。
Kindleでも、もっと多くの本を出して欲しい。
この本(シリーズ)をおすすめする人
- 警察小説が好きな方
- 少し毛色の違った警察小説が読みたい人
- ストーーにのめり込みたい人
- 小説を読んでワクワクしたい人