著者について
佐々木 閑(ささき しずか、1956年9月27日 - )は、日本の仏教学者(インド仏教史、戒律)。真宗高田派の僧侶。花園大学教授(博士(文学)、佛教大学)。
著書
- 『出家とはなにか』(大蔵出版、1999年)
- 『インド仏教変移論、なぜ仏教は多様化したのか』(大蔵出版、2000年)
- 『犀の角たち』(大蔵出版、2006年)。『科学するブッダ』(角川ソフィア文庫、2013年)
- 『日々是修行 現代人のための仏教100話』(ちくま新書、2009年)
- 『「律」に学ぶ生き方の智慧』(新潮選書、2011年)
- 『ブッダ真理のことば = Buddha Dhammapada』(NHK出版、2012年)。「100分de名著」ブックス
- 『仏教は宇宙をどう見たか アビダルマ仏教の科学的世界観』(化学同人(選書判)、2013年)
- 『ゴータマは、いかにしてブッダとなったのか』(NHK出版新書、2013年)
- 『般若心経』(NHK出版、2014年)。「100分de名著」ブックス
- 『ブッダ 最期のことば』(NHK出版、2015年)。「100分de名著」放送テキスト
- 『集中講義 大乗仏教―こうしてブッダの教えは変容した』(NHK出版、2015年)。別冊「100分de名著」放送テキスト
- 『出家的人生のすすめ』(集英社新書、2015年)
- 『ブッダに学ぶ「やり抜く力」』(宝島社、2017年)
- 『ネットカルマ』(角川新書、2018年)
- 『大乗仏教―ブッダの教えはどこへ向かうのか』(NHK出版新書、2019年)
共編著編集
- 『生物学者と仏教学者 七つの対論』(斎藤成也との共編著、ウェッジ選書、2009年)
- 『真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話』 (大栗博司との共著、 幻冬舎新書、2016年)
- 『ごまかさない仏教 仏・法・僧から問い直す』(宮崎哲弥との共著、新潮選書、2017年)
- 『宗教は現代人を救えるか 仏教の視点、キリスト教の思考』 (小原克博との共著、平凡社新書、2020年)
など
以上 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
内容
目次
- はじめに
- 第1講 「釈迦の仏教」から大乗仏教へ
- 第2講 「空」の思想が広がった──『般若経』
- 第3講 久遠のブッダ──『法華経』
- 第4講 阿弥陀仏の力──浄土教
- 第5講 宇宙の真理を照らす仏──『華厳経』・密教
- 第6講 大乗仏教はどこへ向かうのか
- おわりに
感想
最近、故あって、仏教に心惹かれ、各宗派、特に阿弥陀信仰の浄土宗、浄土真宗の新書系の本を読みました。
仏教には若いころから関心があり、禅宗、密教の書物にも触れてきました。
それぞれに知識は持ったのですが、仏教について総合的視野からの本はなかなかなく、この本を手にしました。
最初の話に戻りますが、浄土真宗では日本で仏教のお経として一番なじみのある「般若心経」は読まないのですが、その理由が何となくもやもやしており、違和感がありました。
総じて、一体仏教の本当の姿は何なのか、日本だけでも宗派は奈良時代の華厳宗から天台、真言の密教系、浄土系、日蓮系、禅宗系と幅広く、中には排他的な宗派もあり、信じればそれが正しい宗派なのでしょうが、どれが正しいのかも悩むところです。
著者は原始仏教(釈迦の仏教)や仏教全般だけでなく、キリスト教や生物学、宇宙物理学といった他分野の方との共書も著述するなど、仏教を客観的に研究されてきた方です。
このため、この本を読んで、そもそもの釈迦の仏教と現在の日本の仏教の関係がすこしクリアになった気がします。
お坊さんの中には「宗派や教えに多少の違いはあっても、目指す山の頂は一つである」とおっしゃる方もおられますが、「釈迦の仏教」と、私たち日本人が信仰している大乗仏教とでは、じつは教義の内容がまるで異なっているのです。もともとあった「釈迦の仏教」にのちの人が手を加え、オリジナルの教えとは別のものとして、日本や中国に伝わったのが大乗仏教だと思ってください。(本書より)
結論から言うと、著者も言われているように、正直釈迦の仏教と現在の日本の仏教は全く別のものだが、どれが正しいということではなく、信じる人にはそれぞれが正しいということでしょうか。
私はどちらが正しくてどちらが正しくないのかを論じるつもりはありませんし、大乗仏教を否定する気もありません。どちらの教えにも人々を苦しみから救ってくれる力があるのは事実です。もし本当に大乗仏教がお釈迦様の教えを曲解しただけの底の浅いものでしたら、これほど長きにわたって信仰されているはずはありません。とっくの昔に途絶えてしまっているはずです。(本書より)
それと著者の意図とは違うかもしれませんが、一つの宗派にこだわることなく、各宗派を知りそれぞれの良いところを感じていけばいいのではないかと感じました。
もちろん、現実の正老病死に切実に悩む人にとっては、絵空事であることは承知しつつ。
そして、おそらく往生の時は南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱えることも承知しつつ、仏教という大きな哲学・思想・宗教の森をこれからも散策したいと思います。
この本をおすすめする人
- 仏教の変遷をわかりやすく知りたい人
- 仏教の全体像を鳥観図で知りたい人
- 今までの仏教本に飽き足らない方
- そして、釈迦の仏教と現在の日本の仏教の違いを明確知りたい人
本社は知識として仏教を学ぶものなので、現在切実に悩みがあり救いを求める人には物足りなく感じるかもしれません。ただし、そうした方でも客観的で明瞭な仏教世界の手引きとして読んでみる価値は十分にあります。
名著です。