keepr’s diary(本&モノ&くらし)

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【本の感想】「Wの悲劇」夏樹静子


Wの悲劇 (光文社文庫)

 

あらすじ

山中湖畔の別荘で、製薬会社社長一族が集まる中、姪が当主を刺殺する事件が起こる。一族は事件を隠蔽しようと工作するが…エラリー・クイーンの名作「Yの悲劇」をオマージュした名作。

 

目次

  • 第一章 湖畔の人々  
  • 第二章 雪の中の序幕  
  • 第三章 ひたすらの防禦  
  • 第四章 秘やかな暗示  
  • 第五章 内部犯の構図  
  • 第六章 忍びよる跫音  
  • 第七章 崩された防壁  
  • 第八章 陰の誘導  
  • 第九章 闇の中の終幕

 

感想

10月に入り過ごしやすくなった。ここ数日夏樹静子氏の作品を読んでいるが、今日は「Wの悲劇」について。

昔読んだ時の印象

この作品は映画化、テレビドラマ化もされている夏樹静子氏の代表作で、自分も多分30〜40年ほど前に読んだことがあると思う。

 

ただ、当時は読んであまりピンとこなかった印象があり、薬師丸ひろ子主演の映画も原作そのもののストーリではなく、劇中劇になっていて、いまいち。なぜ原作そもものをストーリにしないのかと疑問に感じた。

 

複雑すぎない面白さ

もう一度と思い読み返してみた。

 

面白かった。洋館風の別荘で一族が一同に会しての殺人事件だから、冒頭か人名を覚えるのが面倒で、舞台はほぼ室内という閉塞的な雰囲気にやや気後れしたが、読み進むにつれて引き込まれていった。

 

倒叙ミステリーで、全員が犯人を守り隠蔽工作をする。合議で隠蔽工作をするので、そもそも危ういのだが、三人寄れば文殊の知恵で、うまく隠蔽工作をしていく。ただ、死亡推定時刻をずらすやり方は、読みながら大丈夫なのかと思った。現代のマリコ様なら見逃さないだろう。

摩子のイメージ「Wの悲劇」より



工作が終わると今度は警察側からの視点で話が進んでいく。

 

探偵役は所轄署の刑事課長で警部。相棒の「警部殿」は別として、当時も今も大体警部補か部長刑事が警察側の主になるので珍しい。アガサ・クリスティのメグレ警部がモデルかも知れない。

 

県警の警部同様に好感の持てる警官だ。署長のキャラは現実にはあり得ないが、欧米っぽいのが面白い。

 

隠蔽工作は事件後短時間で行われたので、○○○を除けばトリックは至ってシンプルなのだが、初期の捜査では気づかれない。

 

ある事情からトリックが破綻するので、極めて精微なトリックを名警部が小さな発見から崩していくという探偵物の王道ではないのだが、謎解きが小難しくないので、ある意味安心して気持ちよく読み進める。隠された真相は?内緒です。

 

ラストで犯人が判明するところで警官の前で事件が起きるのはちょっと意外だ。自分の好みでは最後は〇〇ない方がよかったかも。エンディングは作者の作品らしい余韻が残る。何十年ぶりかで読み返してみてよい方に印象が変わった。

 

冒頭に書いたように、全体として洋館での一族間のミステリーのおどろおどろしさや閉塞感は少なく、比較的シンプルな倒叙小説なので読みやすい。

 

おすすめの作品です。

 

この作品をおすすめしたい人

 

著者について

 

夏樹 静子(なつき しずこ、本名:出光 静子、1938年12月 - 2016年3月)は、日本の小説家。

 

日本の女性推理小説家の草分けであり、繊細な心理描写と巧みなトリックによる『蒸発』『Wの悲劇』などの秀作により「ミステリーの女王」と称された。夫は新出光会長の出光芳秀。兄は小説家の五十嵐均。

 

主な作品

  • 天使が消えていく(1970年 講談社
  • 蒸発―ある愛の終わり(1972年 光文社カッパ・ノベルス)
  • 第三の女(1978年4月 集英社
  • Wの悲劇(1982年2月 光文社カッパ・ノベルス)
  • 弁護士 朝吹里矢子シリーズ
  • 検事 霞夕子シリーズ

ほか作品多数

 

※ 著者、主な作品はフリーの百科事典 夏樹静子 - Wikipedia を参考にした

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