keepr’s diary(本&モノ&くらし)

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【本の感想】恒川 光太郎「異神千夜」


異神千夜 (角川文庫)

 

あらすじ

鎌倉の山中に庵を結ぶ僧に、謎めいた旅の男が語り聞かせる驚くべき来歴―異神千夜。元寇に際して渡来した一匹の妖獣を巡る時代を超えた怪奇な連作ファンタジー

目次

異神千夜 
風天孔参り 
森の神、夢に還る 
金色の獣、彼方に向かう

 

感想

恒川さんの作品を読むのは「無貌の神」に次いで2作目だ。

異神千夜 

宋の商人に引き取られた対馬出身の少年が、数奇な運命に弄ばれる。元寇に際して元のスパイとして潜入するが、取り残された仲間の女占い師と鼬が村を次々に絶滅させる。最後の僧の気づきが怖い。

風天孔参り

現代の話。人里離れた樹海の近くで飲食店を営む中年男が樹海を巡る「風天孔参り」のグループと関わる物語。宿泊したきれいな若い女性と関係を持つ場面は、浅田次郎の「月のしずく」のような男の夢である(本能だろう)。
「ねえ、なんだか夜が静かすぎて、眠れないんですけど、あの、もしもご迷惑でなければ、ここでもう少しお話ししてもいいですか」

竜巻のような風天孔を見つけて消滅する「風天孔参り」はなんとなく羨ましいが、次の案内人になるらしい結末も嫌いではない。

森の神、夢に還る

幻想的な描写から始まり、森の神秘的な描写が美しい。憑依された女性自身の悩みと霊のなった女性の心情が交錯して切ない。森にすむ巨大なかまいたちもストーリーの重要な要素だが、この編では二人の若い女性の心のシンクロがテーマかも。

金色の獣、彼方に向かう

遠隔知覚能力のある金色の鼬にまつわる少年時代の不思議なできごと。河原にいた墓掘り男。鼬は父親が鼬使いだった少女とともに姿を消す。

 

 

毛色の違う各編を通して、神秘的な人を支配する力を持つイタチが姿を変え人々の生死に影響を与えていく。1編目は神秘的、悪魔的な鼬、2編目は実態のない竜巻、3編目は巨大なかまいたち、最後の4編目は最初の1編めに戻り神秘的な鼬に。

 

作品の主人公は鼬なのか、鼬は狂言回しなのか。どちらにしても、単に怪奇、幻想というのではなく、運命に振り回される人々の思いが痛く切ない。

 

「異神千夜」は怖く、「風天孔参り」は憧れ、「森の神、〜」は切なく、「金色の獣、〜」は不可思議。中編と言っていい長めの内容の濃い短編集。この方は文章も上手い。読んでいて時に開放感を感じる。

 

おすすめの作品です。

 

この作品をおすすめしたい人

  • 単なる怪奇ものでなく、内容の深い物語を求める人
  • 不思議なモノを巡る連作を読みたい人
  • 恒川 光太郎氏の作品が好きな人

 

⇩ 著者、主な作品はこちらをご参照

 

keepr.hatenablog.com

 

 

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