あらすじ
万物を癒す神にまつわる表題作ほか、流罪人に青天狗の仮面を届けた男が耳にした後日談、死神に魅入られた少女による七十七人殺しの顛末など。デビュー作『夜市』を彷彿とさせる傑作ブラックファンタジー!(本の紹介文より)
目次
感想
Kindle Unlimited 対象本。まだ読んだことのない作家で、題名がとっつきにくい気がしたが、試しに読んでみたら掘り出し物だった。
無貌の神
混沌としてよくわからない不思議な小編だが、色々なことを暗示しているようで深い。結末もよくわからないが妙なカタルシスがある。
青天狗の乱
この作家作品ごとに雰囲気が変わる。江戸時代末期の流人島の描写が珍しい。時代が変わる時の雰囲気やノスタルジーが心地よい。
死神と旅する少女
題名からして江戸川乱歩の「押絵と旅する男」のような怪奇な幻想モノを想像したが、死神に操られて77人の男を殺した少女モノの割には残虐な描写も少なく、話が壮大な方向に発展するので、案外爽やかな読後感なのが面白い。
12月の悪魔
途中まで面白かったが、影男とは何だったのか、全てが仕組まれていたのか、すべて夢だったのか、どっちにも取れるのが残念かもしれない。
廃墟団地の風人
幽霊めいた存在と貧乏な母子家庭の少年との交流が良い。少年が犯罪に巻き込まれるあたりから結末の予想がついたが、結末は前途多難にせよ爽快感がある。
カイ厶ルとラートリー
怪異なファンタジーだがありがちな面倒くさい紆余曲折が少なく、読んでいて気持ちが良い。神獣と王女の関係も良い。結末は、悲しく切ないが爽快な疾走感があって、こんなところで、と思いながら落涙してしまった。
全編を通して、シュールな「12月の悪魔以外」は読後感が心地よい。ストーリーは込み入っているのだが、変に折れ曲がってなくて直線的、じれったさやややこしさがないのが良い。
作品ごとに内容も変幻自在で、Kindleで久しぶりに評価5を付けた。ホラーではない。かと言って伝奇小説、幻想小説でもない。今まで余り読んだことがない作風で、自分は「怪異を散りばめた大人の童話」というふうに受け止めている。
他の作品も読んでみようと思った。
この作品をおすすめしたい人
- 読後感が良いホラー小説を読みたい人
- 一味変わった小説を読みたい人
- 難しすぎる作品は嫌いな人
著者について
恒川 光太郎(つねかわ こうたろう、1973年8月18日- )は、日本の小説家・ホラー作家。東京都武蔵野市出身。大東文化大学経済学部卒業。
29歳の頃に沖縄県に移住し、塾の講師をしながら書いた「夜市」で第12回(2005年)日本ホラー小説大賞を受賞。2014年、『金色機械』で第67回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞。
幻想的で精妙な作風を得意としている。
主な作品
- 夜市(2005年10月 角川書店 / 2008年5月 角川ホラー文庫)
- 秋の牢獄(2007年10月 角川書店)
- 草祭(2008年11月 新潮社)
- 金色の獣、彼方に向かう(2011年11月 双葉社【改題】異神千夜 2018年5月 角川文庫)
- 金色機械(2013年10月 文藝春秋)
- スタープレイヤー(2014年8月 KADOKAWA)
- 無貌の神 (2017年1月 KADOKAWA)
著者・主な作品は、フリーの百科事典「ウィキペディア」 恒川光太郎 - Wikipedia を参考にした