あらすじ
他人の背中に「幸福度」が見える。本の背をなぞって中身をすべて記憶する。毎朝5つ今日聞くセリフを予知する。念じることで触れたものを壊す。不思議な能力を持つ見知らぬ高校生4人が謎のチケットで集められ、招集された理由を解き明かしていく。そこにはある少女の悲劇と恐るべき秘密が隠されていた。それぞれの能力と個性が魅力的な超能力ミステリー。
目次
- 少し長めのプロローグ
- ダブルエスプレッソとショパンと名言と「85」の背中
- 七月二十三日(初日) ギターケースとドミノ。福沢諭吉と素晴らしき家庭
- 七月二十四日(二日目) バッタと火事と性交渉
- 七月二十五日(三日目) 昔話と〝みっしょん〟
- 七月二十六日(四日目) 英雄 七月二十七日
- (最終日) もし、協力しなければ
- 少し長めのエピローグ ダブルエスプレッソとショパンと名言と「85」の背中
- 回想
- あとがき
感想
浅倉秋成のデビュー作。著者の「教室が一人になるまで」を読んでいたので、本書のあらすじを見て同じような内容だなあと思いつつ読んだ(実はお試し期間中のKindle Unlimitedで読めたので)。
予想に反して非常に面白かった。相当長い物語なのだが、飽きることなく、というよりのめり込んでしまった。
「教室が一人になるまで」の超能力がどういうものだったか忘れたが、本書の能力も一つを除いては、割と地味だ。何の役にたつのかなと思ったが、ストーリー展開の中で非常に上手く役立っている。
不思議なチケットで集められた初対面の高校生4人が、それぞれの能力を活かして得た情報を繋ぎ合わせて、徐々に謎が明らかになっていく過程にとてもワクワクした。特にカジノのカードゲームでどん底からのドンデン返しの展開には痺れた。
立ち向かう敵ボスの企みは、差し迫った危機ではない点がややインパクトにかけるが、展開が早いのであまり気にならない。
普通の高校生っぽい大須賀、活動的すぎる読書家のん、クールなハードボイルド江崎、心に闇を抱えながら凛とした清楚な葵、という4人の主人公の個性に応じて、人称(僕、あたし、俺、私)だけでなく文体も使い分けていることに敬服。物語の世界が広がっている。
エピローグで葵、江崎、のん、大須賀それぞれの思い溢れたエンディングには眼が潤んだ。ラストの回想も甘すぎることなく、心地よい読後感を与えてくれた。
予想に反して星5を付けた。自信を持っておすすめしたい本だ。
現在、本作品はKindle Unlimitedで読めるので、1ヶ月の無料お試しで読むのもおすすめ。Kindle Unlimitedは以前より好みの本が増えている気がします。
この作品をおすすめしたい人
- 超能力ミステリーが好きな人
- 高校生が主人公のミステリーが好きな人
- ライトノベルミステリーに飽き足らない人
- 内容の濃い読後感の良いミステリーを読みたい人
著者について
浅倉 秋成(あさくら あきなり、1989年〜)は、日本の小説家。大学卒業後、印刷会社の営業マンを経て、2012年12月、第13回講談社BOX新人賞“Powers”で、Powersを受賞した長編『ノワール・レヴナント』でデビュー。同時投稿作の『フラッガーの方程式』も2013年7月に書籍化された。
主な作品
- ノワール・レヴナント(2012年12月 講談社BOX / 2021年9月 角川文庫)
- フラッガーの方程式(2013年3月 講談社BOX / 2021年4月 角川文庫)
- 教室が、ひとりになるまで(2019年3月 KADOKAWA / 2021年1月 角川文庫)
- 六人の嘘つきな大学生(2021年3月 KADOKAWA)
※ 著者について、主な作品はフリーの百科事典Wikipedia 浅倉秋成 - Wikipedia を参考にした。