keepr’s diary(本&モノ&くらし)

ネット、読書、音楽、散歩が趣味のおじさんです。趣味、商品、暮らしの疑問、感想を思いつくまま綴ります。

【本の感想】浅田次郎「うたかた」(「見知らぬ妻へ」より)


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この作品について

浅田次郎の短編集「見知らぬ妻へ」の中の一編

ちなみに「見知らぬ妻へ」の掲載作品は次のとおりです。

あらすじ

古びて、ほかの居住者が引っ越した団地に一人だけ残っていた老女が遺体で発見される。桜の花びらが散らばったベランダで、なぜか微笑んで。検視に来た刑事は「うたかた(正しくはひさかた)の光のどけき春の日にしず心なく花の散るらん」と口に出しますが…

 感想(少しネタバレ)

浅田次郎氏の作品で一番好きです。

何度も読み返すのですが、読むたび必ず涙が出るのはなぜだかわかりません。

 

息子と娘は外国にいるが社会的に成功して裕福に暮らしている。

息子は団地を引き払ってこちらに来いと言ってくれている。

 

病苦のわけでもない。

生活が苦しいわけでもない。

人間関係に疲れたわけでもない。

房子が死を選んだ理由は、年齢が近くなった私にも正直分かりません。

でも、房子の心に共感するのです。

 

貧しくつつましいが団地での家族の精いっぱいの生活

狭いが活気のあった団地での生活

環境のせいだろうと思う。広い敷地に豊かな緑。春は桜が一斉に開き、秋は欅が赤く色づいた。そして、家族がそれぞれ最小限のプライバシーを保ちながら、いつでも手の届く場所にいるという、実にころあいの家庭の大きさ。そうした環境が、優秀な団地の子供らを育んだのだろう。

春が来るたび見る団地を取り巻く桜の花の美しさ、見事さ

しかし

団地が老いて行くにつれ、子供らの数は減り、窓まどに灯のともらぬ家も増えて行った。

そして夫との別れ

 

覚悟の死

 

最後に迎えに来てくれた夫の優しい言葉

桜の花びらがいっぱいのベランダ

「もういいだろう、房子」「もうたくさん。あなた、なかなか来てくれないから、くたびれちゃった」(作品より引用)

同じように老朽化した公営団地の近くに住んでいたことがあります。あの雰囲気。

自分の昔、自分の今と重ね合わせてしまう。

 

なんか涙腺が…もう書けません。

読んでください。

 

この作品をおすすめする人

  • 作品を読んでしみじみ感動したい方
  • 涙を流したい方
  • 日本の高度成長期、昭和30~40年代に建てられた公団住宅公営住宅、社宅、アパートなどに住んだことのある方
  • 住んだことがなくても、雰囲気を知っている方
  • 50歳以上できれば60歳以上の方
  • 浅田次郎の作品が好きな方

 ※浅田次郎の短編にはもっと紹介したい作品がたくさんありますが、またの機会に。

 


見知らぬ妻へ (光文社文庫)

著者について

浅田 次郎(あさだ じろう、1951年(昭和26年)12月13日 - 、本名・岩戸康次郎)は、日本の小説家。血液型はA型。日本ペンクラブ元会長。中央大学杉並高等学校卒業。

陸上自衛隊に入隊、除隊後はアパレル業界など様々な職につきながら投稿生活を続け、1991年、『とられてたまるか!』でデビュー。悪漢小説作品を経て、『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、『鉄道員』で直木賞を受賞。時代小説の他に『蒼穹の昴』、『中原の虹』などの清朝末期の歴史小説も含め、映画化、テレビ化された作品も多い。2011年 - 2017年日本ペンクラブ会長。2013年現在、直木賞柴田錬三郎賞山本周五郎賞選考委員。

 

受賞歴

主な作品

長編小説

短編集

  • 鉄道員(ぽっぽや)』(1997年4月、集英社)のち文庫
  • 月のしずく』(1997年10月、文藝春秋)のち文庫
  • 『見知らぬ妻へ』(1998年5月、光文社)のち文庫
  • 『霞町物語』(1998年8月、講談社)のち文庫
  • 『薔薇盗人』(2000年8月、新潮社)のち文庫
  • 『姫椿』(2001年1月、文藝春秋)のち文庫
  • 『歩兵の本領』(2001年、講談社)のち文庫
  • 『沙高樓綺譚』(2002年、徳間書店)のち文春文庫
  • 『五郎治殿御始末』(2003年、中央公論新社)のち文庫、新潮文庫
  • 『霧笛荘夜話』(2004年、角川書店)のち文庫
  • 『お腹召しませ』(2006年、中央公論新社)のち文庫
  • 『あやしうらめしあなかなし』(2006年、双葉社)のち文庫
  • 『月島慕情』(2007年、文藝春秋)のち文庫
  • 『夕映え天使』(2008年12月、新潮社) のち文庫
  • 『草原からの使者―沙高樓綺譚』(2012年 徳間文庫)のち文春文庫
  • 『獅子吼』文藝春秋 2016
  • 『帰郷』集英社 2016 のち文庫

ほか

以上出典:フリー百科事典『ウイキペディア』


見知らぬ妻へ (光文社文庫)

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