今年の夏もいよいよ本番。1週間ほど前からセミが本格的に鳴き始めている。公園の大きな欅の木を見上げたら、セミの抜け殻が幹に密集して、気味が悪いくらいにへばりついている。
地面を見るとセミの幼虫が這い出た穴。「やっと地上に出られたな。」と毎年思う。
セミの合唱を聞くともの悲しくなる。暗い地中での暮らしが長く、羽化すると数週間で死んでしまう一生を哀れに感じるからだ。でもセミからしてみれば「上から目線で偉そうに。無駄に知能が発達したあんたら人間のほうが煩悩、苦痛も多いだろうに」と笑われそうだ。
そんなくだらぬことを考えていると、道路の真ん中を弱ったセミがよたよたと這っている。交通量は少ないが車に轢かれたら一瞬でぺしゃんこになる。幸運にも轢かれずにじわじわと息絶えるのとどちらが幸せか。
毎年、セミの季節になるとそうした諸々のしようもない妄念が浮かぶのである。