メンソレータムとメンターム
ひびあかぎれの薬を買いに薬局に行ったら、「メンソレータム」と「メンターム」が棚に仲良く並べてあった。製薬会社と知名度の差からだろうか、メンソレータムの方が品数が多く値段も高いようだ。
この2つが兄弟のような製品であることは以前から知っていて、内容も同じようなものだろうと思っていたが、成分量や効能書を見て、微妙に、見方によってはかなりの違いがあることに気がついた。
2つの製品の歴史
自分は子供の頃からメンソレータムのお世話になった。当時はメンソレータムを「メンタム」と略して呼んでいた。製造販売していたのは「兄弟社」という言葉が印象に残った「近江兄弟社」という会社である。
諸事情から近江兄弟社は倒産し(会社更生手続)、メンソレータムという商標は使えなくなる。代わりにロート製薬が米国の本家から商標権を取得し、メンソレータムの販売を始める。
近江兄弟社は再建されるが、メンソレータムという名称は使えないので、従来の略称メンタムに近い「メンターム」という名前で従来の製品の販売を始める。
自分の記憶はそんな内容だ。確認するとほぼそのとおりで、近江兄弟社の倒産は1974年、ロート製薬がメンソレータムの商標使用権を取得したのが1975年だったようだ。
そんな経緯から2つの製品の内容はほぼ同じという印象を持っていたが、確認すると次のような違いがあった。
メンソレータムはしもやけあかぎれ用、メンタームはすり傷、切り傷にも
⇩「メンソレータム」の説明書
⇩「メンターム」の説明書
2つの製品の薬効成分はほぼ同じだが、大半を占める添付剤の内容はメンソレータムが黄色ワセリン(成分割合は非公表)であるのに対してメンタームはよりワセリンの純度が高い白色ワセリン(66.44%)と黄色ワセリン(16.63%)を使用。
効能については、メンソレータムがしもやけあかぎれ用で、傷口には使用できないとしているのに対して、メンタームはすり傷、切り傷、ひびあかぎれなどの効能が記載されている。この違いはメンソレータムの添付剤が雑成分が多い黄色ワセリン、メンタームが雑成分が少ない白色ワセリンであることも関係しているのかも(素人の意見です。)。
まとめると、メンタームはすり傷、切り傷に使えるが、メンソレータムは傷口には使えないとされている。これには気づかなかったし、多くの人も知らないのではないか。
※ 実質はあまり変わらないのが、薬品表示に関する姿勢が違うので効能書きが異なっているのでは?と疑ったりするが、薬品表示については薬事法などの法令で厳密に決められているのでそれは考えにくいだろう。
昔はメンソレータムも同じく家庭常備薬のオロナインと同様に軽い傷に使えたような気もするのだが…記憶違いかな。
残るもやもや感
不思議なのはなぜ「メンソレータム」も「メンターム」のように純度の高い白色ワセリンを使わないのか。そしてすり傷、切り傷などにも使えると書かないのか。その方が売れると思うし、傷口に使えないと注意喚起するのも面倒くさいだろう。
ロート製薬会社はキズ用の薬も販売しているので、あえてメンソレータムはしもやけあかぎれ用薬と位置づけている可能性もあるが、それもなさそうだ。もしかしたらロート製薬と近江兄弟社の間で約束があるのかも知れない。
でも、長期間それが続いているのは不思議だ。やはりもやもやするのである。
⇩参考にさせていただいたサイト
メンソレータムとメンターム 100年以上の歴史を持つ塗り薬のお話 – EPARKくすりの窓口コラム|ヘルスケア情報
メンソレータムとメンターム 定番塗り薬100年の秘史: 日本経済新聞