小田原フラワーガーデンのバラ園が爛漫
毎年訪ねて、写真も十分撮り、多少見飽きたので迷ったが、やはりあの色と香りを味わいたくて、今年も小田原フラワーガーデンのバラ園を訪れた。
平日の午後3時なのに駐車場はほぼ満杯。無料で入れるバラ園の人気は高い。塾年夫婦と中高年女性のグループのほか、愛犬連れの人が多いようだ。
犬を連れた人は、たまたまなのか、みんな、精悍な顔の割に胴長、足の短いコーギーを連れて散策していた。
ペットのこと
こういうペットを見るとこの国も裕福になったものだと思う。自分が子供の頃は、町には野良犬やそれを捕まえる野犬刈りがまだいた。
今のようなペットショップはなく、犬を飼う場合は、大抵、他所の家で生まれた子犬や子猫をもらって来たものである。高級そうなコリーやシェパードなど洋犬はTVで見るもので、血統書付きの犬は金持ちの象徴だった。
かと言って高級なペットを手に入れて人が幸せになったかと言えばそんなこともあるまい。血統書付きの犬を飼い、ブランド品を身に纏い、家電やITが驚異的に進化しても、人の心が豊かになった訳ではなく、貧しかった時代の方がむしろ心に上を向くベクトルがあっただろう。
(こんなことを書くのは、アレルギーのためペットを飼えないやっかみが半分ほどあるからたが…)
見ごたえがあるバラ園
さて、バラの話に戻るが、このバラ園は160品種360本のバラが植えられている。大規模なバラ園に比べると花の数こそ少ないが、円弧状のスロープやつるが絡まるフェンスやドーム、背後に広がる花壇に植えられたバラは濃密に咲き誇り、かなり見応えがある。
真紅、ピンクなど赤系のいかにも「薔薇」という感じの花や目に優しい黄色、秘密感のある薄紫色など色とりどりの花と緑の葉が密集して、恐らくこれほどの色彩と香りの漂う花園はほかの花にはないだろう。さすがに花の女王バラである。
鮮やかな花を眺めて人はみんな幸せそうな表情をしている。バラ独特の香りの影響もあるのだろう。バラの花の香りは早朝が一番強く、午後になると残念ながら薄まるようだ。
「山亭夏日」の薔薇
ただ、個人的にはバラの甘い香りは、気だるい午後の方が似合うと感じる。きっとこれは、高校の漢文の授業で読んだ晩唐の詩人高駢(こうべん)の「山亭夏日」に出てくる夏のバラの描写の影響だ。
「山亭夏日」
綠樹陰濃夏日長
楼台倒影入池塘
水精簾動微風起
一架薔薇満院香
(現代語訳)
木々の緑は濃い陰を落とし、夏の日は長い。
高殿は池の水に逆さまに影を映している。
水晶でできた簾が動いてかすかな風が起こり、
棚に置いてあった薔薇の香りが部屋じゅうに満ちた。
https://kanshi.roudokus.com/santeinokajitsu.html から引用
「一架薔薇満院香(いっかのしょうびまんいんかんばし)」
夏の暑さ、影の濃さと静けさの中に漂う薔薇の香りが時代を超えて感じられるようで、唯一覚えている漢詩である。自分はこれを夏の気だるい午後の描写のように感じていて、それからの連想である。
ただ、一般的には香りが強く花も瑞々しい朝から午前中の鑑賞がおすすめだろう。
小田原フラワーガーデンのローズフェスタは、今年は5月13日(土)から6月4日(日)の日程だが、小田原フラワーガーデン HPによれば、今年は開花が早く最盛期は5月初旬〜中旬とのこと。早めに訪れることをおすすめします。