あらすじ
西暦1967年、高校生の東丈は突如超能力に目覚め、幻魔と闘わねばならない現実を知る。幻魔がアメリカ合衆国ニューヨーク市を壊滅させる事件に巻き込まれた丈は、東京に戻ってきた後、人々に幻魔の脅威を知らしめることを始めた。高校の文芸部を発展させ、幻魔への対抗を目的とする「幻魔研究会」(通称「GENKEN」)を組織する。しかし、丈の下に集まってくる「GENKEN」の人々は、彼自身の意図とは別に、丈へのカリスマ帰依者団体の様相を呈してくる。やがて丈が謎の失踪を遂げ、その後の物語はGENKENメンバーを中心に進む。
『少年マガジン』版「幻魔大戦」をベースにしつつ、途中から独自の展開となり、超能力アクションから思索SFへと変貌していった。
西暦1968年、高校生の東丈が失踪した世界の後日譚。人々から崇拝される丈と「GENKEN」に対抗し、元弟子である高鳥慶輔は自らが主宰する団体をつくった。彼の救世主妄想はエスカレートするばかりだった。また、丈の残した「GENKEN」は内部に大きな問題を抱えていた。
小説『幻魔大戦』のストレートな続編。全2部構成。救世主到来を強く望む人々や、妖しい超能力者や霊感少女などを物語に盛り込んだ黙示録文学を、平井和正はタイトルも新たに開幕させた。しかし、物語は助走程度まで進むと、作者自ら執筆を中止した。
出典:フリーの百科事典Wikipedia 幻魔大戦シリーズ - Wikipedia
目次
角川文庫版(全20巻)
- 幻魔宇宙
- 超戦士
- 最初の戦闘
- 救世主への道
- 巡り逢い
- 悪霊教団
- 浄化の時代
- 集結の時
- 青い暗黒
- 超能力戦争
- 闇の波動
- 大変動への道
- 魔王の誕生
- 幻魔との接触
- 幻魔の標的
- 光の記憶
- 光のネットワーク
- ハルマゲドン幻視
- 暗黒の奇蹟
- 光芒の宇宙
感想
夢の記事を書いて思い出したので、昔を振り返って感想を書いてみた。
読んだ頃のこと
この小説「幻魔大戦」を読んだのは30歳少し前の頃。今から約40年前で随分遠い昔になる。
当時、勤務先の3畳ほどの狭い宿舎に住んでいたが、初めての一人暮らしでインテリアにも凝り、緑色の大きな布を買ってきて壁一面に貼ったことを覚えている。今考えるとなんという趣味だったと思うが、当時、精神世界に興味があり、緑=自然のバイブレーションを好んだのだった。
石ノ森章太郎の漫画「幻魔大戦」はまだ読んでいなかったので、この作品を読むきっかけは何だったのだろう。精神世界だとか超能力の関心からか、或いは「ウルフガイ」という漫画を読んでいて、その原作者が平井和正ということもあったかも知れない。
小説「幻魔大戦」の内容
ストーリーは最初の1巻とその後の内容がえらく変わっていて、完結もしていない。今から思えば20巻まで良く読み続けたと思うが、当時は夜を徹して読んだのだった。
主人公は東丈という超能力を持つ少年。出だしはコミック版と同じでルナ王女が乗る旅客機が幻魔に墜落させられ、ベガとともに幻魔と戦うアクションストーリーなのだが、高校に戻り「幻魔研究会(GENKEN)」の仲間とともに見えざる幻魔と戦う。
内容は次第に人の心の中の戦いになり、GENKEN内の人間関係だとか、葛藤の物語になり、次第に宗教的になってくる。
幻魔も物理的なものではなくなり、人間の弱い心の隙をつき忍び込むような存在になってくる。
感想と登場人物
久しぶりに登場人物を確認したら、懐かしい名前が蘇った。幻魔に取り憑かれて変貌する久保陽子、江田四郎。丈の姉東三千子、秘書の杉村由紀や平山圭子、GENKEN有力メンバーの井沢郁江、田崎宏。後に丈を敵視する高鳥慶輔など。
GENKEN内の軋轢や心の葛藤を描くので、ストーリー自体はあまり進まない。行方不明になった主人公東丈は帰らないまま、物語の途中で小説「幻魔大戦」は終わる。作者の平井和正氏も葛藤があったのだろうと思う。
その後、続編の「ハルマゲドン」や、先行して書かれていた「真幻魔大戦」などのシリーズも書き続けられるが、こちらも結局全て未完で終わるのだ。
ただ、夜が更けるまで「幻魔大戦」を読みふけった若い日の高揚感はたしかに存在した。自分への渇望感や精神世界、超能力への憧れが強かったのだと思う。そうした思いは今も残っているかもしれない。
新宗教ブームなど
確認すると、この作品が書かれたのは1979年から1983年まで。バブルに向かう時代で、ものの豊かさに疑問を感じて、心に関心が向かった時代だったかもしれない。もはや学生運動は絶滅し、若い人中心に超能力や精神世界への盛んだった時代だった。多分自分もその中の一人だった。
その後、オウム真理教などの新宗教の活動が盛んになり、若者の一部が熱烈な信者になっていくが、1995年の地下鉄サリン事件などオウムの卑劣な事件が発覚し、そんなブームも冷めていった。
そういえばオウムはロシアで軍事訓練をしたり武器を調達したりしていた。あれは、東欧の社会主義体制やソ連邦崩壊のことだったか。
しかし、ソ連邦崩壊...あれは一体何だったのだろうか。核戦争による人類絶滅が怖かった自分は、東西冷戦がようやく終わり、自由な国が勝ち、核戦争の危険は遠のいた、人類の未来は明るくなったと喜んでいたのだが…
他の作品への影響
付け加えれば、平井和正氏の「幻魔大戦」や「ウルフガイ」などの超能力SF小説群は、後の夢枕獏の「キマイラ・吼」や「魔獣刈り」、菊地秀行の「魔界行」などオカルト伝奇小説に大きな影響を与えたと、自分は思っている。
魔獣狩り(全12巻)合冊版 サイコダイバー合冊版 (祥伝社文庫)
(参考)
幻魔大戦シリーズは諸作品があり、かなりややこしいので整理してみた。
✅1967年に『週刊少年マガジン』で連載開始となった漫画『幻魔大戦』が最初の作品。
過去・現在・未来を通じて宇宙全域の消滅を企てる幻魔が、多くの惑星文明を破壊した後に地球に到着する。それらの種族の生き残り戦士であるフロイとベガが、地球の超能力者たちを目覚めさせ、幻魔との戦い(幻魔大戦)に備えさせるというところから物語が始まる。少年マガジン版は、人類の破滅を示唆する形で打ち切りとなった。
幻魔大戦 《オリジナル完全版》 1
✅1971年、平井と石森の共作により、漫画と小説の折衷的な作品『新幻魔大戦』が『S-Fマガジン』で連載される。
少年マガジン版とは異なる時間軸の1999年、人類が幻魔によって滅ぼされるが、1人の超能力少女が歴史を書き換えるために江戸時代に跳ぶという物語である。しかし、こちらも中断。
新幻魔大戦 (秋田文庫 5-42)
新幻魔大戦
✅1979年、平井と石森が個別にシリーズを継続することになり、平井は小説『真幻魔大戦』、石森は漫画『幻魔大戦』(リュウ版)の連載を始めた。
前者は少年マガジン版とは別の時間軸の現代、後者は少年マガジン版の約1000年後の世界から、それぞれ物語が始まる。
真幻魔大戦6 幻魔目覚める時
幻魔大戦(リュウ掲載版) 神話前夜の章 後編 (石ノ森章太郎デジタル大全)
✅その後、平井は少年マガジン版を小説として書き直すという趣旨で小説『幻魔大戦』(この記事の作品)の連載も始めたが、途中から小説独自の展開になる。
幻魔大戦 1 幻魔宇宙 (角川文庫)
『真幻魔大戦』および小説版『幻魔大戦』はベストセラーになり、SF作家平井和正のライフワーク作品として知られるようになった。
ハルマゲドン(最終戦争)ものの代表作とも評される。また、前世から転生した超能力者たちが悪の勢力と戦うというモチーフは、新宗教と精神世界へも影響を与え、オカルト雑誌の投稿欄には、戦士症候群と呼ばれる前世の記憶を共有する仲間探しが氾濫するきっかけともなった。
ノストラダムスの1999年に人類が絶滅するという解釈の予言から触発されたことを平井自身が明らかにしており、『新幻魔大戦』で世界が破滅するのは1999年になっている。
しかし、リュウ版『幻魔大戦』、『真幻魔大戦』、小説版『幻魔大戦』のいずれも未完となる。
✅平井により『その日の午後、砲台山で』が2004年、『幻魔大戦deep』が2005年、そして実質的な幻魔大戦シリーズ完結編『幻魔大戦deepトルテック』が2008年に刊行された。
その日の午後、砲台山で[幻魔大戦スペシャル]
幻魔大戦deep1
幻魔大戦deep トルテック
✅2014年、七月鏡一脚本、早瀬マサト・石森プロ作画による、シリーズ続編『幻魔大戦 Rebirth』が開始された。
幻魔大戦 Rebirth(1) (少年サンデーコミックススペシャル)
出典:フリーの百科事典Wikipedia 幻魔大戦シリーズ - Wikipedia
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著者について
平井 和正(ひらい かずまさ、1938年~2015年)は、神奈川県横須賀市生まれの日本の小説家、SF作家、漫画原作者、脚本家。娘は漫画家の平井摩利。
主な作品
ウルフガイシリーズ(1971~1995年)
幻魔大戦シリーズ
- 新幻魔大戦 (1978年)トクマ・ノベルズ、のち徳間文庫、角川文庫他
- 真幻魔大戦 (1979~1985年)トクマ・ノベルズ 全15巻、のち徳間文庫 全18巻
- 幻魔大戦 (1979~1983年)角川文庫 全20巻、のち徳間書店 全8集(ハルマゲドンを含む)他
- ハルマゲドンの少女 (1983~1984年)徳間書店 上下巻、のちトクマ・ノベルズ 全3巻
- ハルマゲドン (1987年)徳間書店、のちトクマ・ノベルズ 全3巻
- 幻魔大戦deep (2005年)電子書籍 - e文庫
- 幻魔大戦deep トルテック (2008年)e文庫 全3巻(少女のセクソロジー、少女のセクソロジーIIを含む)
地球樹の女神 (1988年~1992年)カドカワノベルズ 6巻まで、徳間書店 全13集
漫画原作
出典:フリーの百科事典Wikipedia 平井和正 - Wikipedia