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ワクワクしながらの最終回
最終回は驚くべき内容との発表があり、ワクワクしながら見た。確かに、2004年から2025年までを伏線回収を含めて15分の中に凝縮するというとんでもない内容だった。
最初に見た時は、15分の時間の中に予想以上の内容や新たな展開が詰まっていたのは凄いと思う程度だった。だが、その後何回か見直すと、流れるようなストーリー展開、伏線の回収、何よりもそもそもこのドラマがラジオ英会話のテキスト内容だったという構成に驚嘆してしまった。
最終回の内容
冒頭はこのドラマの第1回のオープニングを引用し、ひなたの英語講座の内容がこのドラマと同じで100年の家族の物語であること、今日のラジオ講座がレッスン112でドラマの112回目に繋がり、ドラマの内容=英語講座の内容という仕掛けがうれしい。ストーリーの中にストーリーがあって入れ子に重なる物語、例えば、映画の「ネバーエンディングストーリー」を思い出す。
本編では、まず、2004年、安子が岡山のジャズ喫茶「ディッパーマウスブルース」でマスター健一から「たちばな」のおはぎをいただき、その由来が闇市で金太がおはぎを売るように諭した少年に繋がることに涙ぐむ。
そこへ勇がきぬちゃんの孫花菜を連れてくる。きぬは長く入院しているが(もう80歳)、ラジオを聞いて安子に気がついたと言う。(歳を取った勇と安子の仲の良さにほっこりしました。)
京都に来た安子は大月家で算太の写真を見、電気屋の吉右衛門と再会。きぬの孫花菜同様にここでも孫を本人と勘違いする安子(5,60年ぶりの再開なのでそうなるでしょう)。あんこのおまじないを安子、るい、ひなたの3人で唱える。安子は稔さんの使っていた辞書を見て、ひなたにアメリカの大学で映画と英語を本格的に学ばないかと誘う。横で聞いていたるいはやや淋しげにうなずく(ひなたと離れる淋しさも表現していて本当に演技が上手い)。
ひなたが渡米した後の2005年、ジャズ喫茶の健一は亡くなっており、孫の慎一が店主となった店で仲良くコーヒーを飲む勇と桃太郎(良い雰囲気で憧れます)。やがて慎一はトミーの付き人になり、店はるいとジョーが引き継ぐとナレーション。
そこへ花菜が訪れる。桃太郎は一目ぼれしていきなり交際を申し込むが、横で見ていた勇は「それでいい」と頷く。二人は翌年結婚する。(勇の安子への思い、桃太郎が初めて雉真家に来てチャッチボールしたときに、失恋した桃太郎に勇がかけた言葉につながった)
この後、登場人物のその後が怒涛のように描かれる。
小夜子は仕事を辞めて電気店を手伝うようになり、その後小さな学習塾を開く。電気店のテレビでモモケンとやよいが結婚するニュースが流れる。そのニュースを映画村で視ていた榊原は定年退職するまで映画村に勤め、時代劇のためにつくすとのナレーション。
榊原の妻一恵が一子の後を引き継ぐ。隠居した一子が旦那(タイトルで「夫の田中」。「こわもての客」の3回目の登場で笑ってしまった)と久しぶりの青春を謳歌して「回転焼き大月」のある商店街を歩くと、大月の前で酒屋の主人が桃太郎の妻となった花菜の焼く回転焼きが店の味を引き継いでいるとほめる。
桃太郎は母校の野球部の監督になっていて、10年後には、コーチとなったジョージと息子とともに甲子園へ出場するとのナレーション。
ここでラジオから物語はここまで、との言葉。短時間で、良くこれだけ関係者のその後をリレーのように繋いでまとめ上げたと感心してしまう。
ここまでで11分経過。
タイトル画面と主題歌アルデバランが流れ、安子、るい、ひなたの印象的なシーンと出演者のクレジットが流れる。(クレジットではナレーション役が今までの城田優からラジオ講師の「ウイリアム」に変わり、ウイリアムの演者が「城田優」の字幕が出るところも芸が細かい)
ここで終わりかと思ったが、最後の残り2分の内容が絶妙だった。
お洒落で感動と余韻が残るラストの2分間
映画村で英会話講師のウイリアムに偶然出会ったひなたは、お礼と来年も英会話講座が続くことを告げ、ウイリアムはひなたの書いた100年の家族のストーリーのテキスト内容が素晴らしかったとほめる。
ウィリアムから母と祖母の様子を聞かれたひなたは、両親は相変わらずで元気、祖母も先週100歳を迎えたと微笑む。
ウイリアムは少年時代におじと映画村に来たことがあると話すが、ウイリアムが落としたキーホルダーを見たひなたは、彼が子供の頃に映画村で出会い、初恋の人だったビリーだと気づく。
「あなたは…」というひなたを遮るように、ウイリアムズは「ビリーと呼んで」と声をかけ、ひなたは納得したように(彼が気づいていたと理解したのだろう)実家の回転焼き大月に来ないかと誘う。喜んで受けたビリーは「May I call you Hinata?(ひなたと呼んでいいですか)」と聞き、ひなたは笑顔で「Of course」と答え、ふたりで歩きはじめる。
これからの二人について何とも含みと余韻のあるエンディングだった。ひなたもビリーも60歳くらいだと思うので、結婚という道だけでないのだろうけれど、モモケンとやよいの結婚の話題は二人の可能性のひとつを暗示しているのかもしれない。
自分は保守的な人間だが、結婚、出産をしない主人公というのもひとつの人生、ありかなと思えたラストだった。
ところで、2025年にはこのシーンのようにマスクを外せるようになるといいですね。
改めて全体を通して
このドラマは5月と1週間の放送のようだが、今週の各冒頭部分と今日の15分間だけで残された23年間を描き切ったことに改めて驚く。当初から予定されていたのかもしれないが、ものすごい流れと構成だった。
戦争で夫と家族の大半を失い、その後も不運が重なり、我が子と別れる苦難続きだった安子編。
母への想いを引きずりながら、ジャズとジョーの苦悩に寄り添い、心の声やミュージカルの手法、1950年代のアメリカグラフィティを彷彿させた前半と、京都に引っ越してからの穏やかで明るい日々のるい編。
明るいが何をやっても長続きしなかったひなたが、亡き平川先生から啓示を受け、英語を通じて大人の素敵な女性に成長。終盤は怒涛の展開だったひなた編。
100年3世代の女性と家族の物語には、男の私も胸をときめかせ、貴重な至極の時間をいただいた。
物語の謎解きとクレジットの役名や各時代の小道具、時代を表す曲など、細かいところにもおしゃれな遊び心が溢れていた。桃太郎の鬼退治を思わせる洒落もネットで知るまで気づかなかった。まだまだ、理解しきれていないところもあるかもしれない。
亡くなる場面がナレーションや写真などの間接的表現だったこと、子どもや孫を同じ役者さんが演じたことも、ほのぼとしていて、意外性もあった。
半年間、ときめきと感動を与えてくれた俳優、スタッフのみなさま、SNSで感想と謎解きを楽しませていただいた多くのみなさま、楽しい時間をありがとうございました!
- あずきの声を聞け、おいしゅうなあれ、おいしゅうなあれ
- 日々鍛錬を重ね、来るかもわからぬ機会に備えよ
- ひなたの道を歩いて欲しい
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