keepr’s diary(本&モノ&くらし)

ネット、読書、音楽、散歩が趣味のおじさんです。趣味、商品、暮らしの疑問、感想を思いつくまま綴ります。

【本の感想】佐々木 譲「代官山コールドケース」


代官山コールドケース (文春文庫)

 

 

あらすじ

神奈川県警管内の殺人の証拠から、17年前の代官山女店員殺人事件の再捜査を命じられた水戸部は、年上の女性捜査員とともに、当時の操作資料や関係者への聞き込みに着手する。同じ頃西日暮里で起きた殺人事件の捜査にあたる、代官山事件の元捜査官や科捜研の友人の協力も得ながら、当時見逃されていた事実から事件の真相にたどりついていく。

目次

なし
(章立ては1~19)

感想

再読しようと思い読み始めたら既視感が強かった。サスペンスドラマの始まりのようで、そうかこれテレビドラマでも見たな、読むのも3回目くらいかもしれない。出だしの部分を読んでそう思った。

 

再捜査シリーズの2作目

地層捜査に次ぐ水戸部警部補再捜査シリーズの2作目。前作は四谷荒木町の旧花街に起因する事件だったが、本作は東京のオシャレな街のひとつ代官山での事件。街も事件もかなり雰囲気が違う。

 

物語は神奈川県警管内で起こった事件の証拠から、過去の警視庁の解決済事件が実は誤りだったというところから始まる。極秘で再捜査を行う理由が警視庁の体面という不純な動機であるのはさておき、捜査資料の読み込みから再捜査は始まっていく。地味な作業だが、サスペンスドラマの派手なシーンよりもこちらの方が警察捜査の現実なのだろう。

 

事件当時は同じ時期に発生したテロ事件の影響で充分な捜査は行われなかった。水戸部は改めて、被害者の周辺関係者に聞き込みを行い、新たな事実を発見していく。

 

推理小説では犯人が判明していく経過が面白いが、本作品でも事件当時の捜査資料や証拠品、被害者周辺の関係者の証言から次第に真相が浮かび上がり、別の事件とのつながりも判明してくる過程がとてもワクワクするのだ。

 

事件当時見過ごされてきた遺留の解析や、男性では聞き出しにくい女性の過去などを女性警察官が聞き出していくやり取りなども面白い。西日暮里の事件の捜査と並行して物語が進んで行くの興味深い。

 

終盤はどんでん返しがあり意外な真相に辿り着く。目的の事件の他に新たな事件を掘り起こすのは「地層捜査」と似ていると思った。

 

事件当時への郷愁

前作「地層捜査」では、15年前の事件のさらに30年前、1960年代の花街の様子が郷愁を誘うが、この事件でも、事件当時1995年頃の代官山の町や人々の様子が、当時その場所に行ったこともないくせに、何か郷愁を誘われる。

 

かつて生活感に溢れていた事件現場周辺が再開発で無機質な空間に変わってしまった感覚も、他の場所での同じような体験でよくわかる。

 

作品では当時存在した同潤会アパートについて書かれている。そこに行ったことはないのだが、神宮前の、今の表参道ヒルズのところにあった同潤会アパートは見たことがあり、外壁がひび割れて老朽化していたが長い年を経た味のある建物だった。恐らく、代官山のアパートも同じような感じだったのだろうと思う。

 

本を読んだだけでは、地理感覚がよく分からないので、Googleマップで事件周辺の場所を確認してみた。思っていたより代官山駅から北側でJRの線路に近いことがわかった。機会があればもう一度歩いて確認してみたい。

 

「代官山コールドケース」の周辺地図(現在)

 

代官山散策

筆者はかつて渋谷周辺に住んでいたことがある。代官山にも徒歩で足を伸ばせる距離であり、休日などに散策したことがあった。

例えば、渋谷駅の南口東急プラザ側から路地に入り、住宅街を登ると旧山手通りのメーンストリートに出て、西郷山公園からモダンで洗練された旧山手通りを代官山駅の辺りまで歩き八幡通りを明治通り側に下った。或いは明治通りから恵比寿駅のガードをくぐり、右手の坂道を代官山駅まで上り、旧山手通りを神泉町方面に下ったりしたのだ。

 

代官山駅周辺などには狭い坂道に小洒落た店舗が散在していて、現在もノスタルジックな街が残っている。 そうした街並みを含めて代官山エリアというのだろうが、かつてはそうした小さな店の方が主であったのかもしれない。

 

本作で描かれている事件現場周辺の再開発前の街並みもこうしたものだったのだと思う。街並みだけでなく、登場するカフェバーやファッション・フォトグラファー、ADビデオ監督といったカタカナ言葉の業界人も、1990年代の雰囲気を思い出させる。

 

終盤の真犯人の逮捕劇では、それまでの比較的地味なストーリーがアクションシーンに変わる。全体としても、サスペンスドラマ向きで、実際何回かドラマ化もされているので、本を読んで既視感がある方がいるかもしれない。

 

1990年代の代官山の空気感や、当時夢を追って都会に出てきた若い女性の生きざまや暮らしも伝わってくる。じっくりと推理小説を読みたい方にもおすすめの作品だと思う。

 

この作品をおすすめしたい人

  • じっくりと推理小説を読みたい人
  • 郷愁のある物語が好きな人
  • 地層捜査を読んだ人
  • 佐々木譲の作品が好きな人

 

著者について

佐々木 譲(ささき じょう、1950年3月16日 -)は、日本の作家。東京農業大学客員教授。北海道夕張市生まれ。北海道中標津町在住。京都や東京などで溶接工、自動車組立て工などのアルバイト生活や広告代理店や本田技研で広告関連の仕事に従事、1979年「鉄騎兵、跳んだ」で作家デビュー。歴史や犯罪を主に題材に採り、直木賞をはじめ数々の文学賞を受賞している。ミステリ分野では出身地の北海道警を舞台とした「うたう警官(のちに『笑う警官』に改題)」や警官家族の三代にわたる歴史を描いた「警官の血」などで知られる。

受章歴

 

主な作品

  • 『エトロフ発緊急電』(1989年)
  • ストックホルムの密使』(1994年)
  • 『武揚伝』(2002年)
  • 『警官の血』(2007年)
  • 『廃墟に乞う』(2010年) ほか

 著者・主な作品  出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

 

 


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