政府は30日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、神奈川、千葉、埼玉の首都圏3県と大阪府に対し、新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言を来月2日から発令すると決めた。期限は31日まで。22日を期限に発令中の東京都と沖縄県も31日まで延長し、6都府県が対象となる。菅義偉(すが・よしひで)首相は対策本部後の記者会見で、新型コロナワクチンについて、8月下旬に国民の4割が2回の接種を終えることを目指すとし、「新たな日常を取り戻すよう全力を尽くす」と強調した。(Yahooニュース、毎日新聞より引用)
菅首相が先日の首都圏3県と大阪府の緊急事態宣言の記者会見で、「8月末に国民全体の接種率4割を目指す」と発言しているのを聞いた。
接種率が増えるのは良いことだが、7月末の国民全体の1回目接種率が4割弱と知っていたので、そりゃ1ヶ月たてば2回目の接種率が4割近くになるのは当然で、国の目標のように公言するのには違和感を感じたが、念のため実際の数字を確認してみた。
2021年7月30日現在の数字では、1回目のワクチン接種率は国民全体で38.4%、65歳以上だと85.7%だ。
高齢者の85.7%は素直にすごい数字。菅首相のハッパかけもあったが、実際に接種に当たられた地方自治体や医療関係者の皆さまに感謝したい。
冒頭で述べたように、1回目を接種した人はファイザーなら3週間後、モデルナなら4週間後に2回目を接種するので、8月末の国民全体の2回目の接種率は多分4割近くになるだろう。
ところで、表に掲載されているのは国民全体と65歳以上だけなので、65歳未満はどうなのだろうか。調べればどこかに載っているだろうが、推計してみた。
表の数字から引き算すると、65歳未満の7月30日現在のワクチン接種人数は1回目が約1845万人、2回目が約921万人。
総理府統計局の2020年9月現在データで、65歳未満の人口は8969万人(現在は多少減少しているはずだが、さほどの違いはないだろう)。
この数字で7月末の接種率を計算すると、1回目が20.6%、2回目が10.3%になるので、8月末の見込みとしては、約2割、つまり65歳未満の国民の約2割が接種を完了しているという計算になる。
まとめると、2021年8月末には、
- 国民全体で4割
- 65歳未満で2割
- 65歳以上で8割〜9割
の人がワクチン接種を2回目まで完了している見込みになる。
もちろん、1回目を終わった人が漏れなく2回目の接種を受けられるように、ワクチンが間違いなく供給されることが前提だ。
国民全体の「4割」という数字は、それなりに評価すべきものだと思うし、高齢者の接種率は外国と比べても大変優秀だとは思うのだが、社会での活動が多く、現在のコロナ感染の大半を占める65歳未満の人の接種率は8月末でもまだ「2割」と少ない。(今のところワクチン接種の対象にしていない12歳未満の人も入っているので、それを除けば少し多くなるのだろうが。)
だから、「4割」という数字のみに注目するとミスリードしてしまう。ある種の数字のマジックである。
国民の接種率の実態を知ってもらう示すため、国はこうした数字も発表してほしい。
今後接種を進めるべき65歳未満の人や、重症化の可能性の高い50~64歳の人の接種の状況は、まさに今後国が目指すべき目標であろう。であれば、そうした指標も公表して行くことが求められるのではないか。
従来の首相や政府の姿勢から見ると、できるだけ接種が成功しているように見せたいので、あえて不利な数字を発表しないということも考えられるが、そこまで腐ってはいないと信じたい。
併せて、計算すれば誰でもわかるこんな簡単な事実は、マスコミがもっと報道して欲しいものだ。
統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)
ウソを見破る統計学―退屈させない統計入門 (ブルーバックス)