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【本の感想】出口治明「還暦からの底力ー歴史・人・旅に学ぶ生き方」〜賢者の本かもしれない


還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方 (講談社現代新書)

 

あらすじ

高齢化社会で老後の生活の不安について悲観論があふれているが、歴史や世界をみれば還暦後に活躍した人は多い。その一人である著者が、還暦からの底力を発揮するために必要な、ものごとをフラットに見ること健康寿命を延ばすことなどについて、具体的な考え方、方法を説明していく。

目次

はじめに

第一章 社会とどう向き合うか
・「何歳まで働くのか」を考えても意味がない
・高齢者が生かされる歴史的・生物学的意味
・「敬老の日」を廃止せよ
・「年齢フリー」の世の中に
・グーグル・アマゾンを生み出せない日本の教育
・「飯・風呂・寝る」の生活から脱却せよ (項目は抜粋です。以下同じ)

第二章 老後の孤独と家族とお金
・「老後の孤独」の本質はゆがんだ労働慣行
・死んだら星のかけらに戻るだけ、恐れても仕方ない
・次の世代のために、自分の範囲でできることをする
・運をつかむカギは「適応」にあり
・人とのつながりは「自分」というコンテンツ次第
・人生は愛情の獲得競争
・子孫に美田を遺さず、必要なら生前贈与を

第三章 自分への投資と、学び続けるということ
・80歳でもチアリーダーになれる、DJになれる
・「昔取った杵柄、新たな物事への「感染」
・英語で一番難しいのは日常会話
・成果の出る学習の秘訣は「仕組みづくり」
・「物事の見方」をどう磨くか
・学びが還暦後の底力をパワーアップする

第四章 世界の見方を歴史に学ぶ
・日本が鎖国できたのは「世界商品」がなかったから
・スペインの没落を招いた「血の純潔規定」
ダイバーシティで栄えた国、反ダイバーシティで没落した国
・日本の敗戦はおごり高ぶって開国をしてた結果
・世の中を理解するために必読の古典とは

第五章 持続可能性の高い社会を残すために
・男女差別が日本を衰退させている
・男性が子育てをすると家族愛が高まる科学的理由
・赤ちゃんを産んでも女性が経済的に困らない仕組み
社会保障と税の一体改革は必要不可欠
・よいリーダーとよい政府は市民がつくる

おわりに 

感想

Amazonkindle本の紹介をみて、何となく面白そうなので読んでみましたが、予想以上に面白かった。
著者がライフネット生命社長だったことはネットの記事などで何となく記憶にありましたが、多くの著作があること、先日NHKテレビで温泉と大学の共生のテーマで放送されていた個性的な大学、別府のAPU(立命館アジア太平洋大学の学長であることは知りませんでした。

 

そうした、現役バリバリの人が書いた本なので、さぞ前向きなことが書いてあるのだろうと思いましたが、まさにそのとおり。ただ必ずしも辟易するような押しつけがましさはなくて、随所随所共感できる記述があり、最後まで楽しめました。

 

目次を見ればわかるように、著者の意見は定年制廃止、厚生年金の適用拡大、夫婦の選択的別姓、女性登用のクオーター制など、自由主義的でリベラルな発想が多く、自分は必ずしも同意見ではありません。一方で著者は保守派を自認しており、矛盾してるなあと思うところもあります。

 

しかし、それはさておき、本書で書いてあるいろいろな考え方には共感できる部分がたくさんありましたので引用させていただきます。

 

例えば、次のようなこと。

還暦からの底力を発揮するうえで重要なポイントは、色眼鏡(その人の価値観や人生観)をできるだけ外して、フラットに周囲の物事を見ることです。(本書「はじめに」より引用)

年を重ねると、今までの経験から硬直した見方が多くなるので、これは大切なことだと思います。

 

そして大学に進学しても、学生があまり勉強をしない。これは学生ではなく企業側に責任があります。新卒採用面接で「アルバイトやクラブ活動でリーダーシップをとった経験は?」などという質問をしている限り、誰が勉強するでしょうか。

(本書「第1章社会とどう向き合うか」より引用。以下同じ)

これ、現役時代に面接官になった時、自分も感じてました。いわゆる就活支援企業は学生、企業に同じことを触れこむので、面接ではみんな同じような模範解答になり笑ってしまいました。

 

(グローバル企業では)一方でどこの大学出身であろうと成績が全優の学生は喜んで採用します。自分で選んだ大学で優れた成績を収めた人は、自分が選んだ職場でも優れたパフォーマンスを発揮する蓋然性が非常に高いと考えるからです。

日本の企業社会では、素直で我慢強く協調性があって空気が読めて上司のいうことをよく聞く人を喜んで採用しています。

「企業が命令したら転勤するのが当たり前」というのは高度成長期のいびつな考え方を何も考えずにそのまま引きずっているものですが、少し自分の頭で考えれば、社員の地域との結びつきやパートナーの事情を一切考慮していない、人間性に反した慣行であることにすぐ気付くはずです。

まさにそのとおりですね。

 

日本の社会で老後の孤独が問題になるのは、問題設定自体がおかしくて、一括採用、終身雇用、年功序列、定年という高度経済成長期の人口増加を前提としたガラパゴス的なワンセットの労働慣行こそが老後の孤独を招いているのです。

(本書「第2章老後の孤独と家族とお金」より引用。以下同じ)

人間の本質は脳にあって、魂の存在はないと僕は考えています。もちろん宗教を信じるかどうかは各人の自由なので、輪廻転生で死後は何かに生まれ変わると考えてもいいし、最後の審判まで眠りにつくと考えるのも自由ですが、自然科学では人間は星のかけらからきて星のかけらに戻ると説明しています。(中略)
では、人間は何のために生きるのか、という哲学的な問いが出てくるかもしれませんが、これももうとっくに答えが出ています。動物である人間は、すでに述べた通り、次の世代のために生きているに決まっているのです。自然な感情としても、誰でも子供や孫のためによりよい世界を残したいと思うでしょう。

人間とは何のために生きるかについて、生物学的に子孫を残すことだと思っていましたが、次世代のために生きるという発想は今までありませんでした。その発想は素敵ですね。

 

人間の考えは「人・本・旅」の累積が形作ります。いろいろな人に会って話を聞く。いろいろな本を読む。いろいろな場所に行って刺激を受ける。そうやってインプットした個々の知識を「タテヨコ算数」で整理して、全体像をつかんでいくことが大切です。
※タテは時間軸、歴史軸。ヨコは空間軸、世界軸。算数はデータで物事をとらえるということ。

(本書「第3章自分への投資と、学び続けるということ」より引用。)

これもそのとおりで、インプット、アウトプットは年齢にかかわりなくとても大事なことだと思います。

 

そもそも人間観には、人間にはしっかり勉強すれば賢人になれるという人間観と、人間は勉強したところで所詮はアホな存在である、という人間観の2種類があると思います。(中略)そしてこの「人間はそれほど賢くない」という人間観こそが保守主義の神髄だと思うのです。(本書「第4章世界の見方を歴史に学ぶ」より引用。以下同じ)

別の言い方をすれば、保守主義とは「仮置き」する思想です。賢くない人間には何が正しいかなど永遠にわからないのだから、うまく回っているものごとについては正しいと仮置きしてほおって行くわけです。

 脳の構造から考えて見ても、脳の全活動の9割以上は無意識の領域です。意識できる部分は1割程度と言われています。つまり、理性は人間の脳みその1割部分によって生み出された幻想なので、やはり理性をあまり信じない方がいいと思います。

保守、革新についてのわかりやすい説明です。自分も若いころは理性を信じて革新以外はありえないと思っていましたが、今は著者の言うとおり、人間の思考力、判断力はあまりあてにならないことが多いのだと感じています。

 

迷ったらやる、迷ったら買う、迷ったら行く

(本書「第5章持続可能性の高い社会を残すために」より引用。以下同じ)

要するに,メリットとデメリットがはっきりしていたら、人は選択に迷いません。迷うということは、どちらもよいところがあり、悪いところがあるから迷うのです。 

行動しなければ、世界は一ミリたりとも変わりません。いくつになっても楽しい人生をおくりたかったら、いまの自分が一番若いのだから、いますぐ行動すべきなのです。

 何かを始めることへの躊躇は、失敗して自分が傷ついてしまうことへの怖れもあるのでしょう。人間はつい喜怒哀楽をプラス・マイナスで考えてしまいがちです。

人生には「喜」「楽」はもちろん「怒」「哀」もあった方がいい。喜んだり怒ったり、哀しんだり楽しんだりがたくさんあった方が面白いし、人生は豊かになるはずです。だから喜怒哀楽はプラス・マイナスで計算するのではなく、その総量の絶対値でとらえたほうがよいのです。

喜怒哀楽の総量の絶対値という考え方はすごいなあ。確かにそれこそが人生の経験値でしょうね。

 

自分ではどうにもならないことをくよくよ考え続けるよりも、今夜はおいしいご飯を食べようとか、明日は誰のところに遊びに行こうかと考える方がはるかに楽しい人生を送れるでしょう

特に高齢になると何かに新しいことに挑戦することが面倒になりますが、こういう考え方にはとても励まされます。

 

以上、本の中で共感した部分、覚えておきたい部分を断片的に引用させていただきました。

 

本の紹介文に書いてありましたが、本書は著者の今までの歴史書、読書論、ビジネス書とは一線を画して、「飯・風呂・寝る」の会社人生から脱却し、還暦後の新しい生き方に一歩を踏み出す高齢者へエールを送る本。また、「還暦後」と謳ったのには、定年制廃止を訴える氏の意思を強く反映させるためとのことで、定年後のみならず、現役のビジネスマン、学生にも役に立つ本です。

 

実際、読んでみて、年齢にかかわらず社会、世界、人生のとらえ方について、重要な示唆に富んでいる本だと思います。

 著者のさまざまな意見に賛成する人もしない人も、得るところがある本ではないでしょうか。

 

ご一読をおすすめします。


還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方 (講談社現代新書)

 

この作品をおすすめしたい人

  • 老後の生き方考え方に自信が持てない人
  • 定年後の生活に不満を持っている人
  • 年をとってもまだまだ頑張りたい人
  • 年齢にかかわりなく、ものごとの見方、生き方をもっと知りたい人、考えたい人

 

著者について

出口 治明(でぐち はるあき、1948年〈昭和23年〉4月18日 - )は、日本の実業家。ライフネット生命保険株式会社創業者。現在は立命館アジア太平洋大学学長。

1948年三重県生まれ。京都大学法学部卒。1972年日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年に退職。
同年、生命保険準備会社であるライフネット企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年に社長を退き、代表取締役会長に就任。2017年同社取締役を退任。2018年立命館アジア太平洋大学第4代学長に就任、同大学初の民間出の学長となる。大胆な大学改革と併せて、講演・執筆活動等幅広く活動中。

 

主な作品

  • 『生命保険入門』(岩波書店、2004年/新版、2009年)
  • 『生命保険はだれのものか 消費者が知るべきこと、業界が正すべきこと』(ダイヤモンド社、2008年)
  • 『直球勝負の会社 日本初!ベンチャー生保の起業物語』(ダイヤモンド社、2009年) 『「思考軸」をつくれ あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由』(英治出版、2010年) 改題文庫化『大局観』(日経ビジネス人文庫、2015年)
  • ライフネット生命社長の常識破りの思考法 ビジネスマンは「旅」と「読書」で学びなさい!』(日本能率協会マネジメントセンター、2010年)
  • 『百年たっても後悔しない仕事のやり方』(ダイヤモンド社、2011年)
  • 『仕事は“6勝4敗"でいい 「最強の会社員」の行動原則50』(朝日新聞出版、2012年)
  • 『部下を持ったら必ず読む-「任せ方」の教科書-「プレーイング・マネージャー」になってはいけない』(角川書店、2013年)
  • 『仕事に効く 教養としての「世界史」』1-2(祥伝社、2014-16年)
  • 『早く正しく決める技術 決断に勇気はいらない!』(日本実業出版社、2014年)
  • 『ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊』(日経BP社、2014年)
  • 『「働き方」の教科書 「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本』(新潮社、 2014年)新潮文庫、2017
  • 『本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ21、 2014年) 
  • 『日本の未来を考えよう』(クロスメディア・パブリッシング/インプレス、2015年)
  • 『人生を面白くする 本物の教養』(幻冬舎新書、2015年)
  • 『生命保険とのつき合い方』(岩波新書、2015年)
  • 『働く君に伝えたい「お金」の教養 人生を変える5つの特別講義』(ポプラ社、2016年)
  • 『「全世界史」講義 教養に効く!人類5000年史I古代・中世編』(新潮社、2016年)
  • 『「全世界史」講義 教養に効く!人類5000年史II近世・近現代編』(新潮社、2016年)
  • 『人生の教養が身につく名言集』三笠書房 2016
  • 『図解部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書』KADOKAWA 2016
  • 『50歳からの出直し大作戦』講談社+α新書 2016
  • 『おしえて出口さん! 出口が見えるお悩み相談』ウェッジ 2017
  • 『教養は児童書で学べ』光文社新書 2017
  • 『グローバル時代の必須教養「都市」の世界史』PHPエディターズ・グループ 2017
  • 『座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」』KADOKAWA 2017
  • 『図解仕事が速くなる!生産性が上がる!最強の働き方』PHP研究所 2017
  • 『人類5000年史 1』ちくま新書 2017
  • 『本物の思考力』小学館新書 2017
  • 『リーダーは歴史観をみがけ 時代を見とおす読書術』中公新書ラクレ 2017
  • 明治維新とは何だったのか』祥伝社 2018
  • 『0から学ぶ「日本史」講義(古代篇)』文藝春秋 2018
  • 『戦前のお金持ち』小学館 2018
  • 別冊NHK100分de名著 読書の学校 出口治明 特別授業『西遊記NHK出版 2018
  • 『知略を養う 戦争と外交の世界史』かんき出版 2018
  • 『人類5000年史Ⅱ』ちくま新書 2018
  • 『知的生産術』日本実業出版社 2019
  • 『「おいしい人生」を生きるための授業』PHP研究所 2019
  • 『僕が大切にしてきた仕事の超基本50』 朝日新聞出版 2019
  • 『0から学ぶ「日本史」講義(中世篇)』文藝春秋 2019
  • 『哲学と宗教 全史』ダイヤモンド社 2019

 

著者・主な作品 出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』 

 


世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵 (文春e-book)

 


人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)

 


全世界史 上巻(新潮文庫)


全世界史 下巻 (新潮文庫)

 


座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 (角川新書)

 


部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない (角川書店単行本)

 


本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法

 


生命保険入門 新版

 


生命保険とのつき合い方 (岩波新書)

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