あらすじ
渋谷地下の事件で神に出会った晴山と岩沢。クランは公安部の区界を中心に神の正体に近づいていく。岩沢は伝説の組長から神について新たな事実を知るが、新たなテロ事件が巻き起こり、事態は急展開していく。
目次
- プロローグ1――報道者
- プロローグ2――狙撃手
- 第一章余波
- 第二章集結
- 第三章伏流
- 第四章往訪
- 第五章彼誰
- 第六章水壁
- 第七章払暁
- 第八章要砦
- エピローグ――桐一葉
感想
読み終わると全部は覚えていないぐらい、この回は話の展開が大きくいろいろとありました。
「あんた……神に詳しいようだな」「ああ。まあな。けっこう古い仲だ」
渋谷地下の事件の後の動きで、クランに新しい人物が加わるなど、話は相変わらず面白く、ミーティングでのやり取りも心が躍り面白い。
「――ヤクザ者だ」「やはりな!」区界はひどく愉快そうだ。「あんたは、ヤクザを顎で使えるか。見上げたフィクサーだ!」「そのヤクザは、どこから?」綾織検視官が訊いてきた。この女も興奮している。「……隣の駅から潜ってきた」「素晴らしい!」
区界の笑みは複雑。簡単には読み解けない。いちばん単純な表現をするなら、この男は明らかに病んでいた。
ただ少し、ミーティングの場面が長いかな。
伝説の組長の過去の抗争についての話は今後どうつながるのだろう。こちらも興味津々です。
今回一番面白かったのは水族館でのテロの場面。テロの首謀者と巡査との会話がなんかほっこりして面白かった。そのあとの岩沢への電話も、こういう電話を突然もらったら呆気に取られてびっくりするだろうなと楽しかった。その件で課長と話してる最中だしね。
『すみません岩沢さん』また詫びが届いた。『わたくし実は、いま、立て篭もり犯の方と、お話ししていまして』
巡査を撃ったスナイパーが、クランに参加?するに、妹の病気のために神に従ってきたのに、その事情が変わらないまま、変心するのはすこし唐突かもしれません。解釈すれば巡査を撃ったショック、銃弾が当たったのに重傷にならないことの混乱、公安区界の口車かな。そうだったらおかしくないな。読み飛ばしてしまったのかもしれない。
足ヶ瀬巡査の信じがたい秘密をクランのメンバーに明かして驚く場面を期待しましたが、FBI捜査官からの連絡で新たな事態が発生し、次回のお楽しみになりました。
ああ、そうですね。クラン、沢村鐡さんの小説の醍醐味は、読者がこうなるだろうと期待する方向に内容や文章が展開していくいい意味の定番感、ちょうど水戸黄門で、そろそろ出るかなと思っていたところに、「ひかえい、ひかえい、この紋どころが目に入らぬか!」のようなものなのかな。うまく書けないけれど。
最後の渋谷デライト(ヒカリエのことでしょう)の、犯人を劇場ホールに追い詰めていくが消えてしまうという内容は、他の推理小説でも何度か読んだ覚えのあるストーリー展開です。残念ですがここはイマイチかな。思い出したのはえーと…米澤穂信「愚者のエンドロール」(古典部シリーズ)。(古典部シリーズも今度感想を書こう。)
あと、以前書いたように章ごとに主体が変わりますが、これって必要なのかな。ハードボイルドの感じを出しているんでしょうけど、読む方は頭の切り替えが大変。全部三人称にもいいのかと。
いろいろ、書きましたが、この作品面白いことは変わらずで、4巻以降どんな展開になるのかも全く想像できません。
おすすめです。
この作品をおすすめする人
- 楽しくワクワク読書をしたい人
- 警察小説が好きな人
- エンターテイメント小説が好きな人
- ストーリにのめりこんで本を読みたい人
- 沢村鐵が好きな人
著者と主な作品
こちらをご参照 ↓
keepr.hatenablog.com